第4回ポケモンリーグ任天堂公式トーナメント全国大会準優勝の中村彬君も決勝戦で活躍した《バトンタッチ》。クリスタルバージョンの配信でいよいよイーブイの進化系もバトンタッチを習得できるということで改めて第二世代の仕様や対戦環境に沿ったバトンタッチについておさらいしてみました。
バトンタッチを単体のコンボと切り離して考える
市販の『ポケモンスタジアム金銀』の攻略本などでは『バトンタッチ』を一括りでコンボと称することがしばしばあるが、『ポケモンバトルヒストリア』及び『きんのいれば』では1匹のポケモンの技構成によって完結するもの(単体コンボ)と2匹以上のポケモンの技構成によって完成するもの(連携コンボ)を極力分けて考えることを推奨している。
gold.hatenadiary.jp 『バトンタッチ』はそれを引き継げば簡単に展開できるといった単純なコンボではなく、1匹のポケモンの犠牲を払うことをよく考慮する必要のある戦法(連携コンボ)と考えている。これはリフレクターや光の壁、天候のような場の状態を残しながら自爆、大爆発による自主退場する戦法と大変近いものとして考えているからである。
第二世代でバトンタッチできる状態変化
バトンタッチサイドに有利な状態変化
能力変化
- ヨガのポーズ(こうげき↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - つるぎのまい(こうげき↑↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - 《ドーブル限定》はらだいこ(こうげきを+6)*1
- バリアー(ぼうぎょ↑↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - とける(ぼうぎょ↑↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - ドわすれ(とくぼう↑↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - 《ドーブル限定》せいちょう(とくこう↑)
- こうそくいどう(すばやさ↑↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン: - のろい(こうげき↑、ぼうぎょ↑、すばやさ↓)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン:ほぼすべて - かげぶんしん(回避率↑)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン:ほぼすべて
金銀クリスタルの対戦で代表的な能力変化&バトンタッチは『つるぎのまい』と『こうそくいどう』の攻撃的な2ランクアップの2種類です。これは第二世代の対戦環境では強力な積み技があまり存在しないためです。
なお、防御的なランクアップはリフレクターや光の壁と言った場の状態を採用した方が技スロット1枠分の節約にもなり、ほぼ採用されることはありません*2。なお、丸くなるの転がるのダメージを倍にする効果、小さくなるで相手の踏み付けの被弾ダメージが2倍になる効果は第三世代以降と同様、引き継がれません。
気合溜め(≒クリティカッター)
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン:
第二世代では急所ランクを+1する効果。
【第二世代限定】白い霧(≒エフェクトガード)《ドーブル限定》
GB世代では白い霧が神秘の護りのような場の状態ではなかったため、引き継げる。なお、シャワーズは白い霧もバトンタッチも覚えられるが、バトンタッチと同時に覚えさせることはできない。
身代わり
バトンタッチと同時に覚えられるポケモン:
第三世代以降と変わらないが、身代わりの最大HPが変動したりはしないのでシャワーズのようなHPの高いポケモンの方が身代わりの場持ちは良い。なお、第二世代の身代わりは呪い(と悪夢)が貫通しないため、第七世代の呪いミミッキュのような感覚で身代わり→バトンタッチ対策しようと思うと対策できなかったりする。
【重要】蜘蛛の巣・黒い眼差し
第四世代までは引き継げた(らしい)状態変化。この技を繰り出したポケモンと対峙している相手の『ポケモン(を入れ替える)』コマンドを封じることができる。これを味方のポケモンに引き継ぐことによって、相手の『ポケモン(を入れ替える)』コマンドを封じて有利なポケモンを一方的にぶつけることができてしまう。
バトンタッチサイドに不利な状態変化
混乱
混乱の持続ターンも引き継がれるので、破壊の遺伝子の混乱持続ターン255も引き継がれます(2018/01/07検証済)
心の眼・ロックオン(≠ヨクアタール)*3
見破る
【第二世代限定】猛毒
GB世代の猛毒は状態異常ではなく状態変化である。これはバトンタッチされたポケモンが毒、若しくは火傷状態(2018/01/07検証済)であるとき、バトンタッチをしたポケモンの猛毒の増加ダメージを引き継ぐことになる。稀に起こりうる。
宿木の種
呪い
悪夢
猛毒と同様で、これはバトンタッチされたポケモンが眠り状態であるときに引き継ぐことになる。寝言でバトンタッチを選択しない限り、起こりえないため、この現象に実践で遭遇するのはかなりレアケース。
滅びの歌
バトンタッチ対策として現行の第七世代でもしばしば取り上げられるが、金銀クリスタルの対戦においては《滅びの歌=バトンタッチ対策》という認識はあまりない。その理由は黒い眼差し→バトンタッチで相手だけ交換が選択でき、共倒れになるポケモンを一方的に選べるため、根本的に対策になっていないからである。
対バトンタッチのキーワードは『起点回避』
吹き飛ばし・吠える
金銀時代は吹き飛ばしと吠えるはかつてコンボ封じなどと呼ばれていましたが、現在は『(コンボ展開の)起点回避』と呼ばれているのが一般的でしょうか。ただし、第二世代の吹き飛ばし・吠えるの使用感については最新世代と少し違って、受け出しからでも吹き飛ばしと吠えるで積み技を対策しやすい環境にあることが大きな違いとなります。吹き飛ばしや吠えるは、黒い霧や滅びの歌、呪い、悪夢と違って黒い眼差し→バトンタッチ、身代わり→バトンタッチまでのすべてのバトンタッチに対応できる最高のバトンタッチ対策として言われ続けてきました。
ちなみに第二世代では自分が相手より先攻で吹き飛ばし・吠えるを繰り出した場合は技が失敗します。そのため、バトンタッチ対策として吠えるを覚えたスイクンを影分身→バトンタッチシャワーズに受け出ししても、吠えるを次のターンにお互いが打ち合えば、素早さの高い先攻のスイクンの吠えるは失敗し、シャワーズの吠えるだけが成功するため、吠えるがバトンタッチ対策にならない場合があります。
また、相手が吠えるを同時に打ち合わなくても寝言で繰り出した優先度±0の吠えるで先攻で繰り出して失敗してしまうこともあります。
自爆・大爆発
受け出しから対策すると考えずに『起点回避』と捉えるならば、第二世代の強すぎる共倒れ性能を持った自爆・大爆発であっても相手のワンサイドゲームは阻止できる。短期戦向けの構築は吹き飛ばしと吠えるを採用せずに以下との両立ができるナッシーなどで対策しているケースが見かけられる。
相手の行動を眠りやアンコールで制限する
これも『起点回避』としては有効。相手を眠らせたり、アンコールで状態変化を繰り返し使わせてバトンタッチまで繋げられないようにすることが狙いとなる。寝言で変化技を繰り出される場合はうまく対策とならない場合が考えられるが、バトンタッチはそもそも技スペースを2枠は確実に割いてしまうため、薄荷の実や奇跡の実を装備させて眠りを対策していることの方が多い。
また、アンコールは繰り返しを要求した相手の技のPPが切れてしまうと行動制限が解除されるので黒い眼差し(通常PP:5)*4→バトンタッチの対策にはならない場合もある。
第二世代の代表的なバトンタッチ展開
定義があってるかは分からないが、能動的なゲームメイクによって成される全抜きを通していく構築を『展開構築』と呼ぶものだと個人的に思っている*5。現在の光の粘土を装備したリフレクターや光の壁、また、キノコの胞子のような相手を眠らせる技での御膳立ては第二世代でも同じように行われている。
ガラガラ(@太い骨)への高速移動→バトンタッチ
クリスタルバージョンから習得した剣の舞によって、ガラガラが先制できる環境を作り出せば、大半のポケモンを1ターンキルできることでその昔より人気のある単純明快なコンセプト。なお、レベル55のカビゴンは剣の舞→地震で確実に1発ではないことに注意したい。
ex.)
Lv | ポケモン | 技1 | 技2 | 技3 | 技4 | 持ち物 |
---|---|---|---|---|---|---|
55 | ガラガラ | 地震 | 岩雪崩 | めざ虫 | 剣の舞 | 太い骨 |
50 | ドーブル | キノコの胞子 | アンコール | 高速移動 | バトンタッチ | 気合の鉢巻 |
50 | カビゴン | のしかかり | 地震 | 腹太鼓 | 自爆 | 食べ残し |
50 | ナッシー | めざ草 | 痺れ粉 | リフレクター | 大爆発 | 黄金の実 |
50 | マルマイン | 10万ボルト | 電磁波 | 光の壁 | 大爆発 | 奇跡の実 |
55 | ニドキング | 地震 | 大文字 | 雷 | 角ドリル | 薄荷の実 |
かつてはガラガラの苦手な草や水、エアームドに強いハッサムやサンダースなどで高速移動→バトンタッチを採用するケースもあったが、近年はキノコの胞子を採用できるドーブルがバトンタッチ役として採用されることが多い。
高速移動→バトンタッチに固執せず、自分がバトンタッチではない交代を選択しても効果の残る麻痺やリフレクター&光の壁によってエースを引き立てる。
黒い眼差し→バトンタッチ
こちらはガラガラよりゲームメイクがサイクル戦寄りで、やや受け身のゲームメイクのため、複雑で難易度が高め。相手に難しい対策を要求することが狙いで、詰ませ方のひとつとして考えるのがやはりベスト。
ex.)
Lv | ポケモン | 技1 | 技2 | 技3 | 技4 | 持ち物 |
---|---|---|---|---|---|---|
52 | ミルタンク | 影分身 | 丸くなる | 転がる | ミルク飲み | 光の粉 |
51 | ファイヤー | 大文字 | 日本晴れ | 寝言 | 眠る | 木炭 |
52 | ブラッキー | 追い討ち | 甘える | 黒い眼差し | バトンタッチ | 食べ残し |
51 | カビゴン | のしかかり | 大文字 | 自爆 | 眠る | 薄荷の実 |
52 | ナッシー | サイコキネシス | 宿木の種 | 眠り粉 | 大爆発 | 奇跡の実 |
51 | ムウマ | 電磁砲 | 黒い眼差し | 滅びの歌 | 道連れ | 黄金の実 |
黒い眼差し→滅びの歌を吹き飛ばしや吠えるを覚えたポケモンを1匹だけ連れてきた相手を黒い眼差し→滅びの歌と黒い眼差し→バトンタッチで負荷をかけて、どちらかを通すという高度なギミックがあるのだが、電磁砲ムウマなどの台頭で今時、黒い眼差し→滅びの歌ゴーストをスイクンの吠えるやエアームドの吹き飛ばし1本で対策しようとする経験者はおらず、滅びの歌のコンボを仕掛ける前に圧倒できる地面ポケモンや眠り粉を覚えたポケモンで対応されてしまうことが多い。
このコンセプトはどちらかというと転がるミルタンクを立てるために障害となる黒い眼差し→滅びの歌のゴーストポケモンとナッシーを追い討ちで処理することが目的であり、黒い眼差し→バトンタッチを決めることが目的ではない。
追い討ちヘルガーの場合とは異なり、転がるしか打点のないミルタンクでは追い討ちヘルガーを繰り出しにいくタイミングか読まれ易く、滅びの歌を覚えたゴーストポケモンとミルタンクが場に対峙している状況で、ヘルガーに強いカビゴンを投げる選択が安定の行動となりやすい。
しかし、ブラッキーはミルタンクがムウマと対峙しているとき、追い討ちブラッキーの登場に合わせて同時に出すポケモンが吹き飛ばしや吠えるを覚えたポケモンでなければ、こちらの黒い眼差し→バトンタッチのコンボを通すことができる。
吠えるを覚えたハガネールや吹き飛ばしを覚えたエアームドとムウマがきた場合は、黒い眼差し→バトンタッチや追い討ちに拘らず自爆、大爆発でラスト1匹同士の吹き飛ばしや滅びの歌を無効にして、対策するなど別の勝ち筋への切り替えも必要になる。
*1:金銀クリスタルの通信対戦限定で最大HPの1/2+1がないときは、こうげきランク↑↑
*2:能力ランクの高さによって効果の異なる第五世代初登場のアシストパワーのような技も第二世代には存在しない
*3:なお、ヨクアタール状態は[自分が対象]、心の眼状態は[相手が対象]なので別物である。ちなみにヨクアタール状態もバトンタッチで味方に引き継ぐことができる。
*4:この対策を防ぐため、敢えてPPをポイントアップを使って8にしないことがある
*5:第三世代以降の拘り鉢巻&逆鱗、拘り眼鏡&流星群、そして拘りスカーフのような持ち物による奇襲への切り替えしを構築時点で考えて、捨て出し(死に出し)からの積み展開や身代わり絡みの嵌め展開を罠カードを仕掛けるかのように組んでいく色合いが強いものを『起点構築』と個人的に捉えている。これは金銀までの対戦環境にほぼ存在しない