きんのいれば

ポケモンGB世代の老兵によるメモ入れ場。

金銀対戦を見通せるようになるまで

 ポケモンで勝てる人ってどんな人?って訊かれたら、あなたならどう答えますか?今の僕ならば「自分の(構築段階で)想像していたゲームプランをきちんと通せる人」のことを指すんじゃないかなと答えると思います。

 勝てる人はそのゲームの現環境を見通す能力に長けているわけです。その感覚を高めるために実践経験を積みながらも、ダメージ計算ツールを自分で叩くことでダメージ感覚を養ったり、ポケモンのパラメーターや覚えられる技、それがこなせうる役割、強い並び、強い選出、世代特有の独自仕様を学んだり、トレンドを探るわけです。

 このブログでメインで取り扱っているポケモンGB世代*1というのは、現行世代のポケモンと比べて厳選やら育成やらは大変なんですが、考慮すべき情報量自体は少なく、非常にシンプル。そこが魅力の1つでもあると思っています。

 だからこそ、ポケモンGB世代の対戦環境を理解すること自体は(他の世代の対戦環境の固定観念などに囚われていなければ)それほど難しくないと思っています。

GB世代は"選出段階"でゲームを見通し易い

 GB世代は選出段階において展開を見通しやすいゲームです。それはポケモン、技、持ち物の数が後の世代に比べてずっと少ないからだけではなく、選出の段階で分かる情報が後の世代に比べてはるかに多いからです。

  • 性別によって、こうげきの個体値が推測できるため、メロメロ目覚めるパワーのような型判別がしやすい。
  • 努力値配分が存在しないことから相手のレベルを見た瞬間に各ステータスの限界パラメーターが判別でき、複数の場合分けの必要となるダメージ計算を必要としない。

 これらのことから究極的には、選出段階においてダメージ計算を行える材料はすべて揃っているわけなので、試合がどのように展開されうるのかを選出の時点で概ね分かってないと一人前とは言えないわけです。

  また、公式ルールとして定義された選出の制限時間がありません(※大会運営に支障のない程度で大会毎によって異なる。なお、ポケモンスタジアムのイベントバトルモードでも選出についてはゲーム側で制限時間を設定できない)。少なくとも現行世代の90秒ではない。

 だからと言うわけではないのですが、個人的には自分の主催している『ヒストリアカップ』では選出を決める時間を目安10分と広く取っていることをよくよく有効に活用して頂きたいなと思っています。厳選育成が簡単で、対戦相手に困らない現行世代の対戦と違って、それ自体が滅多にない機会だからこそ、慎重・丁寧な選出をしてベストを尽くして欲しいと思っています。

自分の見通しが変わった2つのポイント

 ちなみに20年近く対戦経験を積んでいる自分が、このゲームを結構見通せるようになっているのは当然と言えば当然なんですが、20年の内に考え方を大きく変えるターニングポイントというのが2つほどありました。それが2001年前後2011年前後にありました。今回はその2つを改めて紹介しましょう。

【2対2視点】『役割理論』で見えるようになった1~最終ターン

 これを構築の構想段階で考えるための最初の道標が、自分の恩師でもあるしゃわさんが広めた役割理論です。簡単に説明すると各々のポケモンの力任せな個人技(前作の吹雪や影分身etc.)に頼るのではなく、選出した各々のポケモンを相手の誰と戦わせるかを重視した戦い方です。まるで場の状態やバトンタッチ、追い討ち、影分身の対策となる滅びの歌や道連れが登場した金銀の対戦において個人技はもう通用しないことを思い知らされるかのような考え方でした。

 …と言っても役割理論そのものよりも、ダメージ計算結果をきちんと用いて「(高・低)乱数〇発」という言い回しを定着させたことが実は一番の彼の功績でしょうか。そのダメージ計算結果をもとに受け回しの中で何処から穴が開いて負けてしまうかを考えられるようになったわけです。

 ただ、昔の役割理論を大々的に用いて解説してる人って、発祥の金銀でも後の世代についても今では少ないです。なぜなら、役割理論はパーティは6匹まで、選出できる手持ちは3匹までという決められた制約があることをきちんと考慮した対戦理論ではなかったからです。あたかも無限に線が繋げられるように書いてしまっていたのだ。

 お互いの選出した3匹が割れれば、どちらが勝つか分かる程度のスキルは身についても、それを強い構築に仕上げる能力がなかなか身に付かなかったんですね。つまり、2対2まではきちんと見えているのに3対3は見えていない。役割理論1~最終ターンまでの結果をイメージできるようにしてくれたけど、実は選出という0ターン目をイメージできていなかった。また、このゲームを長年やればやるほど、選出画面の時点でほぼゲームが決まっていることに気が付くわけです。

 ちなみに2000年代を代表する第2世代の構築ジム城ヒストリア 2001〜2005ジム城ヒストリア 2005〜2009は、そのほとんどが受け回しから相手を崩すタイプの構築しか結果を出していなかったりします。

【3対3視点】強い選出を本気で考えたときに見える0ターン目

 3対3視点は役割理論のように他人の影響を受けたわけでなく、受けの役割が金銀対戦のようにギリギリ足りるわけでもないHGSS時代のバトレボ対戦を経て、自ずと気が付いたことだったりします。これを形にできたのがちょうど10年前の元旦。

gold.hatenadiary.jp ここから更に掘り下げて、そもそも強い選出とは何か?…という本質的なことを掘り下げてできたのが以下の記事。

gold.hatenadiary.jp この辺から腐る腐らないという言い回しであるとか、カビゴンが入らなくてもそれまで成り立っていたサンダーエースの構築からイノムーが消えてカビゴンが定着したり、特定の選出に対してのみしか刺さらないようなフルアタックバンギラス、セミフルアタックのバクフーンがサブエースとして戦略的に採用されたり、特定の選出に刺せるポケモンに必ず勝てるジャンケンをさせるために自爆や大爆発による速攻系の構築が受け回しと対等の評価をされるようになります。役割理論でクローズアップされ過ぎた受け目的ではなく、手段の1つ程度と考えられるようにもなります。

 昔の役割理論の暗黙の了解として存在していた、全抜きできうる決定力を有したエースポケモン穴を埋められるサポートメンバーによって成り立ってる構築こそが評価される時代が終わりを迎え、現在に至ります。

 勿論、これは自分の力だけではなく、その当時(既存の理論とは切り離して)ポケモンの強さの本質を見極める能力に長けた某氏とその一派によって今現在の形になっているのかなと思います。良くも悪くも昔の役割理論のアタリマエに毒されていなかったことが良かったようにも思います。

20年経った今、構築手法は大きく変わるか?

 あれからいよいよ10年が経ちましたが、多分構築の組み方に関わる大きな発想転換はもう起こらないのではないかと個人的に思っています。この2つの転換期については、木を見て森を見ず」という諺に引っ掛けて、

木(1:1)を見て林(2:2)を見て森(3:3)を見て、最後に行き着くところが環境を知ることで、このゲームをもっともっと見通せるようになれば、ずっとずっと面白くなるということで自分の中で完結させています。

 所謂、受け回し構築は2対2視点爆破速攻構築は3対3視点ということになると思いますが、個人的にはどちらも必要な目線だと思っており、どちらが得意で、不得意と言うことはあまりなかったりします。時間が許すならば、あまり苦手意識を持たずに両方を知った方が自分のためになります。

 ちなみに55カビゴン軸の構築しか最近使わなくなった理由は、昔と比べて50カビゴン軸の方が多数派だから、それを蹂躙する方が楽しいに決まってると思ってるだけです。昔は55カビゴン軸が多数派だったから55カビゴンをあまり使ってませんでした。なお、バランス構築については育成面で非効率的ということと、その強みについて自分が納得できる論理的な裏付けがないから第2世代ではあまり使いません(※自爆が強過ぎず、ミラーマッチの発生しやすい第1世代ではハーフエース型が強いと思います)。

ゲームを見通すスキルを付ける近道「対戦ログの観察」

 これを磨くためには実践を重ねて経験値を積むことが勿論近道なのですが、第三者同士の対戦を見る能力を高めることもお勧めです。

 最近VCオフ出身の方々も出入りしているとか聞く『Gym Leader's Castle』に自分が通ってた時に15年欠かさずやっていたことなんですが、他人同士の対戦ログを閲覧するときに両者のパーティを見比べてどちらが勝つかを予想してから、試合内容を飛ばして試合結果を先に見るのが結構オススメです。…というか、やらないと正直損です

 これをやっておくと自分の予想通りなら自分の見通しが正しいことが分かって自信になり、間違っていれば、対戦ログの内容を見返しながら自分の中で足りない立ち回りやポケモンの型のような知識が素早く手に入るからです。

これを現行世代でもやりたいなと思うわけですけど、世に蔓延している対戦動画というのは、動画内で2~3試合を1つの動画にしたりするので、お尻が分からずその作業が面倒だったり、そもそも答えがサムネイルで分かってしまうのも良くなかったりします。

 ちなみにくれぐれも勘違いしないで頂きたいこととして、所謂エアプを推奨しているわけではありません個人的には仮説と実践(検証)の繰り返しの中で、その擦り合わせを絶えず行うことで、自分の仮説通りに試合を運べるように己を高めることが常日頃大事だと思っていて、そういう姿勢が垣間見えない人は何年やってようが、説得力を持たなくなってくるものです。これは自戒の意味も込めてですけどね。

*1:赤緑青ピカチュウ[第1世代]&金銀クリスタル[第2世代]